ドイツの「ソーラーキオスク」がアフリカで導入を進めるソーラーパネル付きの小さなキオスク。その用途は売店以外にも広がり、社会課題の解決を加速させている。
アフリカの電力市場に眠るポテンシャル
そもそも、ソーラーキオスクの画期的なアイディアは一体どこから湧いてきたのだろうか?
「アフリカには『Seeing is Believing』(自分の目で見ないと信じない)ということわざがあります。私たちがソーラー関連の製品をアフリカに販売し始めた時、お客さんから製品を購入する前に実物を見たいという要望が多くありました。そもそも遠隔地では太陽光発電がまだまだ浸透していないので、電気がつくれることを信じてもらわなくてはいけない。だから、ソーラーの力だけで運営されているショップでソーラー製品を売るのは、説得力がありますよね。実際に電化製品などが長時間機能しているのを見て、信頼されるようになりました」(ソーラーキオスク CEO Thomas Rieger 代理:Andreas Spieß)
ソーラーキオスクの取引先には、「シーメンス」や「コカ・コーラ」、「エリクソン」などの世界的に有名な企業も多い。もちろん貧困や社会課題を解決するため、という人道的な目的もあるが、これらの企業はビジネスチャンスを見据えてソーラーキオスクと協働しているという。
「私たちが活動しているBOP市場は、5兆ドル以上と予測される大きな規模ですが、インフォーマルな市場のため顧客が見えにくい状況です。しかし、ソーラーキオスクがこの市場で構築したサプライチェーンは徹底してデータ解析がなされており、その正確な情報をパートナー企業に共有しています。よって企業側は、自社製品がどこで必要とされ、誰にどのくらいの価格で購入されるかなどを知ることができます。さらに企業の商品をBOP市場に紹介するという役割も果たしています」(ソーラーキオスク CEO Thomas Rieger 代理:Andreas Spieß)
アフリカの多くの国では、残念ながら多くの汚職が未だに存在する。さらに、現地の法律や規制の複雑さがビジネスの障壁となることもある。そこで、ソーラーキオスクは「ゼロ・トレランス方式」と呼ばれるわずかな不正も逃さない徹底した管理を社内外で実施。その結果、社内では従業員と会社が一体となったポジティブな企業文化が醸成され、社外ではビジネスパートナーや公的機関と健全で生産性の高い関係性を構築できている。
太陽光発電が社会に貢献できること
近年ソーラーキオスクが力を入れているのが、E-HUBBの仕組みを応用した難民支援だ。2017年にはドイツの「シーメンス財団」、ヨルダン保健省と協力し、ヨルダン・マフラク近郊の難民キャンプにソーラーシステムを導入したクリニックを設置。シリア人難民が来院すると、ヨルダンの医療システムに登録されて、治療が受けられる仕組みになっている。電力供給の停止が許されない病院の環境において、太陽光発電で電力が供給されるソーラーキオスクの製品は心強い味方になる。また、2019年にはソーラーキオスク自ら、バングラデシュ・クトゥパロンにあるロヒンギャ難民キャンプにソーラークリニックを建設した。
さらに、ヨルダンのザータリ難民キャンプにソーラースクールを設置。現在およそ1000人の子供たちが教育を受けている。太陽光発電による電力供給のおかげでコンピューターの稼働とブロードバンドへの接続が可能となり、「ユニセフ」などが提供する質の高いeラーニング教材を授業に取り入れられるようになったという。
その他にもソマリア、エチオピア、ケニアなど世界各地の難民キャンプで、保健所や通信関連施設、職業訓練施設といった売店以外のさまざまな用途にE-HUBBを応用することに成功している。
「ソーラーキオスクは太陽光発電の力を信じています。ソーラーの力で経済のピラミッドの最下層にいるBOPコミュニティや、国際社会の狭間で苦しむ難民のコミュニティーをエンパワーするために、これからも新しいアイディアを追求していきたいです」(ソーラーキオスク CEO Thomas Rieger 代理:Andreas Spieß)
写真提供:ソーラーキオスク