インリー・グリーンエナジージャパンが開発した屋根一体型ソーラーカーポート「MOENZO」。国土交通省の「飛び火認定(DR)」も取得したこの製品を、亀井エンジニアリングが初めて設置した。

日本で構造計算された安心・安全な強度で、国土交通省の「飛び火認定(DR)」を取得した防火性能も誇る「MOENZO」は、サステナブルな暮らしを実現するために開発された。この商品に目をつけたのが、大阪を拠点とする1969年創業の亀井エンジニアリング。公共のガス導管や通信管路、電気管路などの設置工事業を通して社会のライフライン構築の一端を担い、また建築工事業においては、共同住宅の新築工事や大規模修繕工事などに携わってきた総合エンジニアリングカンパニーだ。「好奇心」「創造力」「集中力」を重視し、現状に満足することなく常に進歩を目指す同社の経営理念は、「時流を読み、豊かな社会(くらし)の創造に貢献する」。建築の分野から環境問題に取り組もうと、「MOENZO」を設置した経緯を代表取締役の亀井泰慶さんは次のように説明する。

ソーラーパネルが車と家庭に電力供給

「弊社がこのご時世で再生可能エネルギーの新事業を立ち上げるにあたりまして、EV車の今後の普及に目をつけました。EV車は、運転に必要なエネルギーの転換によって環境負荷を削減させるだけではなく、暮らしに必要な電気の供給源になるという話を聞き、リサーチをしました。そこで、V2H(*)という、災害時でも非常電源としてEV車から必要なところに電気を供給できる蓄電池機能付きのシステムと出会いました」

*Vehicle to Home=EVの大容量バッテリーを家庭で有効活用するためのシステムや考え方

「MOENZO」設置の経緯を話す代表取締役の亀井泰慶さん。

亀井エンジニアリングに設置された「MOENZO」。

家庭の交流電気を直流に変換して車両を充電し、車両の直流電気を交流に変換して家庭に放電を行える電気機器がV2Hだ。安い夜間電力で充電し、蓄電池に溜めた電力を日中に車でも家庭でも使えるこのシステムに太陽光発電を組み合わせれば、電気代の節約とエネルギー排出の削減を行える。「豊かな社会(くらし)の創造」に貢献するためのアイデアが浮かび上がってきた。

設置工事のスムーズさも実証

「再生可能エネルギーである太陽光発電システムで、V2Hシステムとジョイントできるものを探していたところ、インリーさんの『MOENZO』と出会ったのです。EV車のソーラーカーポートとV2Hという二つの持つ価値を合わせることで、新たな価値が生まれると考え、弊社で購入して設置することを決めました」

再生可能エネルギーに関連した新規事業を始めるにあたり、「実際にお客様に目で見て、触れて、効果を見ていただくためのショールームのような役割」を持たせるために「MOENZO」を設置した。屋根に設置されたソーラーパネルから車に充電され、併設されたV2Hから家庭に放電される仕組みがシンプルなケーブルの接続の様子から見てとることができる。亀井エンジニアリングの工事スタッフが施工に携わったというが、複雑な接続構造もなく、導入にあたり工事はスムーズに行われたという。

「MOENZO」からEV車にプラグをつないで充電。

V2Hシステムとの接続で活用性がさらに広がる。

「本当に簡単な工法と言いますか、一般的な基礎工事を済ませ、カーポートにおいては組み立て式になっているので、説明書があれば問題なく組み立てられます。構造体を設置したら、上にソーラーパネルを貼り付けるだけなので、コンクリートを乾かす期間も含め、1週間程度で非常に簡単に施工が完了しました」

すでにEV車をチャージしてV2Hシステムとの連動も試し、快適かつ有効に活用できる手応えを得ていると語る。

「MOENZOはソーラーパネルが両面発電になっているので、非常に発電効率もいいですし、上に空が透けるようなシースルーのガラスモジュールとアルミステンカラーを組み合わせた、スタイリッシュなデザインにも非常に満足しています。お客様からの評判もよく、さらにデザインの選択肢が増えたり、付加価値がつくことでもっと購入者が増えるはずだという声も聞くので期待したいですね」

防火試験に合格した耐火性を備え、風速44m/sと積雪99cmにも耐えられる強度を持つ「MOENZO」がV2Hと組み合わさることで、日本国内ほとんどの地域で環境負荷の削減とコストの節約、そして震災にも利用できるエネルギー源を確保することになる。設置の容易さも亀井エンジニアリングで実証された。サステナブルな暮らしを実現するこうしたシステムの普及が、環境負荷の削減に大きく貢献するはずだ。

両面ソーラーパネルで床面からの反射光も発電に利用。

インリージャパン副社長の張文波さん(左)も取材に同席した。