【再エネピープル】でご紹介した小田原かなごてファーム代表の小山田大和(おやまだ・やまと)さんの続編。小規模のソーラーシェアリングを少しずつ地域内に増やしている。そこには「顔が見えるエネルギー」を広めたいという思いがある。

2016年の1号機設置から2年後、小田原かなごてファームは、事業性のあるソーラーシェアリングとして2号機「桑原発電所」を開所した。1号機の2倍以上の土地に208枚の太陽光パネルを設置。年間総発電量はおよそ6万2000kWh(キロワットアワー)。世帯あたりの年間電気消費量が4322kWh(2017年年度、環境省ホームページより)なので、約14世帯が1年間使用する電気を供給できる計算だ。

2号機で取り組んだのは米づくり。北陸生まれで、背丈が低く倒れにくい品種のキヌヒカリを栽培している。炊き上がりはパラッとしていて、米肌のつややかさからその名前がついている。

しかし米づくりそのものが初めてだった小山田さん。思う通りの収穫量になるまで3年かかった。最初の年は、台風で支柱が倒れてしまい収穫できなかった。翌年はより深く、しっかりと支柱を立て直したが、思うよう収量が上がらなかった。そして、3年目にしてようやく5俵の米を収穫することがでた。その米を地元で230年続く老舗酒蔵「井上酒造」に持ち込み、日本酒を醸造して「推譲」として販売。ソーラーシェアリングや、食とエネルギーの自給という小山田さんの考え方を、多くの人に知ってもらうきっかけとなった。

田植えや稲刈りの機械も使える支柱の高さにしたが、多くの人に取り組みを知ってもらうために田植えもイベントとして楽しんだ。

ソーラーシェアリングでできたお米からできた日本酒「推譲」。酒造りの過程で使う電力も再生可能エネルギーを使用している。

食とエネルギーを100パーセント自給するカフェ

1号機、2号機で発電した電気は、FIT(*1)を利用して電力会社に販売し、利益を得ている。しかし、FITの売電価格が下がりつつあり、FITで定めた20年間の買い取り期間が順次終了となっていく中で、再生可能エネルギーの事業者は自力で電力会社と契約を結び、販売していく道を探らざるを得ない。そこで小山田さんは、FITを使わず、オフサイト方式(*2)・自家消費型のソーラーシェアリングに挑戦することを決心した。

太陽光発電の施設と電気を使う施設を専用の電線でつなぎ、直接電気を供給するオンサイト型の取り組みは、これまでにも多くの例がある。しかし3号機では、発電した電気を新電力会社「グリーンピープルズパワー」に販売し、既存の送電線から新電力会社が電気を利用する施設である農家カフェSIESTAに供給するという仕組み(=オフサイト方式)を導入することにしたのだ。3号機での発電量がSIESTAでの使用量と同じか上回っていれば、エネルギーの自給が保証される。同電力会社によると、この仕組みによる再生可能エネルギーの自家消費は、全国初の試みだという。

*1 Feed in tariffの略語で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を指す。再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間、買い取る制度。

*2 太陽光発電施設とは離れた場所にある電力使用場所を、既存の送電線を使って結ぶ仕組み。

農村復興に尽力した二宮尊徳ゆかりの地

510坪の土地に200枚の太陽光パネルを設置している3号機は、SIESTAから4キロほど離れた酒匂川沿いにある。江戸時代に築かれた堤防の上に松並木が残っている。酒匂川は、小山田さんが大学時代に治水史を学んだ川でもあり、縁を感じる場所だ。

上空から眺めた3号機。二宮尊徳ゆかりの地でもある。

「小田原は農村復興に尽力した二宮尊徳の出身地で、尊徳は若いころにこの近辺で田畑を耕したといわれています。生家も近くにあるんですよ。尊徳の報恩思想は、『万物にはすべて徳(=よいところ)があり、それに報いる(=活用する)』というもの。太陽の力を生かし、農業やエネルギーの明るい未来を切り開いていくにはぴったりの場所だと思っています」

3号機の下で作っているのは、薄荷(はっか)やラベンダーなどのハーブ、大根、落花生、春菊、ホウレンソウなど旬の野菜。SIESTAの薄荷ティーは、ここの薄荷を使っていて、さわやかですがすがしい香りが鮮烈だ。畑の一角にはコンポストがあり、SIESTAで出た生ゴミはここで肥料となって、おいしい野菜を育ててくれていて、小さな循環も生まれている。

「すぐ近くを小田急の電車が通っているんですよ。川があって、畑や田んぼがあって、そこに電車が通っている。とてもいい風景だと思いますし、尊徳が同じ場所に立っていたと思うととても感慨深いです。そこにソーラーシェアリングがあることが誇らしい。例えばクリスマスに電気でライトアップすれば、電車から見えるし、それを見るために人が来れば観光にも貢献できる。なんだかワクワクしますね」

3号機の下で育つ大根。無農薬で雑草も抜かない自然栽培で育てている。

農家カフェSIESTAのドリンク。左はおひるねみかんジュース。右は薄荷ティー。

エネルギーは分散型で供給

202110月には、神奈川県北部の愛川町の「おひるねみかん愛川みませ発電所」が売電を開始。このかわいらしい名前の発電所は、建設費用を市民の出資から募る、市民による市民のための発電所で、小田原かなごてファームは設置に協力した。さらに今年(2022年)は、神奈川県南足柄市でもソーラーシェアリングの設置が決まっている。

2021年10月から稼働している愛川町のソーラーシェアリング。ここでは太陽光パネルの下でみかんを作る。

小山田さんが取り組むソーラーシェアリング、一つ一つの規模は決して大きくない。しかし、その「小さい」ことに価値があると小山田さんは言う。

「これまで電気は地方で作り、都会に届けるという図式で、再生可能エネルギーの開発でも同様の方向で進んでいます。しかし、それではいけないのではないかと思っています。地域に小さな発電所があり、それをコンピューターで制御し、必要な場所に必要な量を供給する『小型・分散化』の方が理にかなっていると考えています。それは決して難しいことではなく、既存の技術でできるんですよ」

エネルギーを作る場所が分散していれば、災害時に電線が切断しても自立して使うことができるし、何よりもエネルギーを自分たちの地域に取り戻すことができる。地域の自立にもつながっていく。地域で再生可能エネルギーは広がれば、CO2の削減にもなる。

「食の世界ではよく“顔が見える”といいます。誰がどんなふうに作ったかを知ることで、消費者は食べ物への安心感を得られます。ソーラーシェアリングでも、それと同じような関係を利用者たちと構築することができると思っています」

太陽の力を存分に活用して、農業も行い、エネルギーも生み出す。再生可能エネルギーを広げるチャレンジが、小田原から広がっている。

小山田さんの周囲には環境やエネルギー、まちづくりなどに関心のある人が、老若男女集まってくる。

農家カフェSIESTA前で販売されている地元の野菜。同じ志を持つ仲間をどんどん巻き込んでいく力があることも小山田さんの魅力だ。

写真一部提供:合同会社小田原かなごてファーム

合同会社小田原かなごてファームHP

https://odawarakanagote-farm.com/

農家カフェSIESTA HP

https://www.siesta-odawara.com/top/