新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で延期となっていた「ドバイ万博2022」が2021年10月に開幕しました。2022年3月まで開催中の「ドバイ万博2022」で注目したいのが、オランダパビリオンの建物です。
特徴はステンドグラスのように美しい屋根。その正体はなんと「ソーラールーフ」なのです。デザイン大国であるオランダでは、再生可能エネルギー関連のプロダクトも進化を遂げている様子。
今回はオランダパビリオンの屋根を手がけたデザインカンパニー「Marjan van Aubel Studio」と、その最新プロダクトの「Ra」をご紹介します。
この記事を通して、再生可能エネルギー関連のプロダクトの新たな可能性を感じていただければと思います。
Marjan van Aubel Studioとは?
Marjan van Aubel Studioはアムステルダムを拠点とするデザインカンパニー。サステナビリティ、デザイン、テクノロジーを融合した未来を創造することを理念に掲げ、数々の受賞作品を世に送り出しています。オランダ出身のデザイナーMarjan van Aubelは、2012年から「ソーラーデザイナー」として活躍。
聞き慣れない職業ですが、ソーラーエネルギー分野の専門デザイナーであるソーラーデザイナーは世界的に希少です。彼女はそのなかでもパイオニアのような存在です。
では実際に、Marjan van Aubel Studioがこれまでに手がけてきたユニークなプロダクトの一覧をご覧ください。
Moon Light
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発泡磁気を使ったムーンライト。
The energy collection
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DOEN materiaalprijs2012の優勝作品。色素増感太陽電池技術は、EPFLのMichaelGraetzelによって発明されました。
Table 1/7
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Images taken by Wai Ming Ng 発泡木材を使用したテーブル。
Well Proven Chair
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JAMES SHAW、AMERICAN HARD WOOD EXPORT COUNCIL、BENCHMARKFURNITUREとのコラボレーション
ヴィトラデザインミュージアム、モントリオール美術館、オーストラリアのビクトリア国立美術館、MoMAニューヨークの常設コレクションの一部。ARC13チェアアワードを受賞し、2013年デザインオブザイヤーアワードにノミネートされました。
Current Table
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Made possible by Stichting DOEN and Innovate UK – images by Mitch Payne
Current Table 1.0は、ロンドンデザインミュージアムの権威あるデザインオブザイヤー賞にノミネートされ、現在ロッテルダムのボイマンスヴァンベーニンゲンの常設コレクションの一部となっています。 Current Table 2.0は、Peter Krigeと共同で、Caventouの下で開発されました。
Current Window
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Images by image by Wai Ming Ng, Amy Gwatkin and Sasa Stucin
WIRED Product Innovation Award2016を受賞したガラスパネル。
Current Table 2.0
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Made possible by Stichting DOEN and Innovate UK – images by Mitch Payne
Current Table 1.0は、ロンドンデザインミュージアムの権威あるデザインオブザイヤー賞にノミネートされ、現在ロッテルダムのボイマンスヴァンベーニンゲンの常設コレクションの一部となっています。 Current Table 2.0は、Peter Krigeと共同で、Caventouの下で開発されました。
Cyanometer
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images by Mark Cocksedge
2017年のデザイナーオブザフューチャーの優勝者として、スワロフスキーとデザインマイアミとのコラボレーションで作成されたポータブルソーラークリスタル。
Cyanometer Collection
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スワロフスキーのクリスタルパレス照明コレクションの一部。
Power Plant
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images by Emma Elston and Britt Berden
ソーラーガラスを利用した水耕栽培システムの研究。
Ministory of Finance
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architecture and image credits: Marieke Spits
太陽エネルギーを美的かつ循環的に統合するこの建物は、オランダ財務省への提案。
Sunne
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Sunneは屋内で光を取り込み、保存し、生成するセルフパワーのソーラーライトです。
The Netherlands Pavilion
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Marjan van Aubel Studioは、ドバイ万博2022のオランダパビリオンのソーラールーフを設計しています。
Ra
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Marjan van Aubel Studioの最新のソーラーアートワーク。
いかがでしょうか?
日本ではソーラーパネルといえばブルーのパネルが一般的ですが、オランダではガラスやフィルムを使用した“新しいタイプ”の素材を使った革新的なプロダクトが多く出てきています。そして、そのバリエーションやデザイン性の高さには非常に驚かされます。
ソーラーデザイン業界を牽引する彼らの最新プロダクトが今回紹介する「Ra」です。
太陽光エネルギーをアートに変える「Ra」とは?
古代エジプトの太陽神ラーから着想を得たという「Ra」は、太陽光を動力源とするMarjan van Aubel Studioの最新のソーラーアートワークです。
「Ra」は窓にかけて使用します。ステンドグラスのように美しい有機太陽電池は太陽光を吸収し、日中エネルギーを蓄積しながら、窓から差し込む光で空間に鮮やかな影を演出します。
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窓から差し込む光で空間に鮮やかな影を演出
そして「Ra」は、日が落ちてからリング状の優しい光を放つ照明へと変わります。
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日中の「Ra」
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夕方の「Ra」
「Ra」の構造と仕組みとは
「Ra」は第3世代のソーラーテクノロジーである有機太陽電池を、薄いフィルムにプリントして使用します。有機太陽電池が取り込んだエネルギーは内蔵バッテリーに蓄えられ、電気エネルギーに反応して発光するエレクトロルミネセンス紙に電力を供給する仕組み。これにより、作品の薄さをわずか1mm以下にすることが可能になりました。
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薄さはわずか1mm以下
有機太陽電池とは。太陽電池との違いは?
現在一般的に実用化されている太陽電池は、無機化合物(主にシリコン)からなる太陽電池です。これに対して、有機太陽電池とは、一般的に太陽光などを吸収、変換する層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池のことを指します。太陽電池と比べて低コスト、軽量、曲げられるなどの特徴があります。有機太陽電池は近年になってエネルギー変換効率が急激に向上して実用化レベルに達しつつあり、従来の太陽電池に変わる存在として世界中で研究が進んでいます。
より安価で多用途の有機太陽電池の実用化が進めば、モバイル用充電器や照明など、日常のあらゆるものに利用される可能性を秘めています。これが実現すれば、化石燃料に頼らない自然エネルギーの割合を増やすことで、二酸化炭素の排出量を減らすことに繋がるのです。
「Ra」が目指すもの
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まるでステンドグラスのような鮮やかな色合い。
「Ra」は最新テクノロジーを駆使し、通常は技術的なイメージが強い太陽光発電をアートに変えることを目指しています。
かつて教会のステンドグラスが過去のストーリーを語っていたように、「Ra」は私たちの未来のストーリーを語っています。それは地球上のすべての生命を動かす無限のエネルギー源である「太陽の力」に目を向ける、脱化石燃料の未来です。地面を掘り返すのではなく、空を見上げるような、希望のストーリーです。
まとめ
オランダに拠点を置くMarjan van Aubel Studioは世界のソーラーデザイン業界を牽引するデザインカンパニーです。彼らの最新プロダクトである「Ra」は、サステナビリティ、デザイン、テクノロジーを融合させ、アートという新たな価値を与えることで、私たちに太陽光の無限の可能性を示してくれています。
太陽光電池の普及は進んでいるとはいえ、まだまだ個人で導入するにはハードルが高いと感じる人は多いのが現状。そんな人にとって「Ra」は、日常生活に太陽光パネルを取り入れる心理的ハードルを低くしてくれるようなプロダクトなのではないでしょうか。これならデザインの観点から取り入れたくなる人が多そうです。
「Ra」のようなサステナビリティ、デザイン、テクノロジーが融合したプロダクトが増えることで、自然エネルギーへの転換をポジティブに捉えられる人が増えればと思います。
今後のMarjan van Aubel Studioとソーラーデザインの発展に期待したいですね。
Marjan van Aubel Studio